top of page

Global History Workshop Report

未来戦略機構第9部門「グローバルヒストリー研究」国際ワークショップの開催

 

未来戦略機構第9部門の主催で、3月15-17日の三日間、中之島センターにおいて国際ワークショップ “Globalization from East Asian Perspectives” を開催した。このワークショップは、昨年6月から3年計画で始まった6つ主要大学(オクスフォード・英、プリンストン・米、コンスタンツ・独、ライデン・蘭、コルカタ・印、大阪)で構成される国際コンソーシアム「グローバルヒストリー」共同研究の第二回研究集会であり、オクスフォード大学グローバルヒストリー・センターと、イギリスのレヴァヒューム財団からも資金援助を得た。7か国・13名の外国人研究者を含めて、合計33本の研究報告がなされた。

共同研究全体の共通テーマは、 “Global Nodes, Global Orders” であるが、今回の大阪会議では、東アジア世界から見た「グローバル化」の歴史的展開と、それをもたらした諸要因および影響を、古代から現代にいたる長期の時間軸と、一国史的なnational historyの枠組を超える広域(region)の空間軸という二つの座標軸を組み合わせて、グローバル化を歴史研究として実証的に議論した。オクスフォード大学教授James Belich氏の基調講演に加えて、大阪大学の歴史系が優れた研究実績を有する(a)古代―中世の中央ユーラシア史、(b)近世の海域アジア史、(c)近現代のグローバル経済史の三つの領域を中心に、7つのパネルを組織した。

​三日間の討議を通じて、空間軸に関しては、古代シルクロードの時代から中世・モンゴル帝国およびその後継諸帝国(明朝・大清帝国)の興亡の舞台となった、東南アジアの海域世界を含めた「東ユーラシア」(the Eastern Eurasia)という新たな地域概念の有効性が問われた。欧米の研究者からは、欧米中心史観を相対化するため、ヨーロッパを「西ユーラシア」(the Western Eurasia)の一部と位置付ける見解が提示され、ユーラシア大陸スケールでの比較と関係性の考察が不可欠であることが強調された。他方、時間軸に関しては、欧米中心の近代世界像(長期の19世紀)を見直す必要性、19世紀後半におけるアジア諸地域での現地人商人や小農の主体性にもとづいた経済開発の展開など、現代のアジア太平洋地域の経済成長(東アジアの奇跡)を見据えた新たな時代区分の可能性が議論された。

今回の大阪会議は、3年間で6回開催される予定の第2回目の会議であり、オクスフォード中心のコンソーシアムに、大阪大学が独自に構築してきたアジア太平洋地域の国際ネットワークである「アジア世界史学会」(The Asian Association of World Historians: AAWH)のネットワークを重ねあわせ、重層的な議論が可能になった点は特筆に値する。未来戦略機構第9部門は、今後とも、アジア太平洋地域における新たな世界史、グローバルヒストリー研究のハブとしての役割を果たしていきたい。

(未来戦略機構・第9部門代表、文学研究科世界史講座教授、秋田茂)

 

bottom of page